訪問4コマ漫画㉜「リハビリプレッシャー」
先日、とある利用者さんよりこんなことを言われた。
『先生、暑い中来てもらって悪いわね。先生こんなに一生懸命やってくれるのにちっとも進歩しなくて、、、ごめんなさい。』
何気ないやり取りであったが、なんかグサっと刺さった。
皆さんはリハビリという言葉にどんなイメージを持っているだろう。
キツイ?痛い?大変?
どことなく体育会系のイメージが先行して、私はリハビリなんてできないわよ〜。と尻込みする方もいる一方
よくなる!元に戻る!など機能回復をイメージしている方も多くいる。
果たしてそのイメージは合っているのであろうか?
そもそも、リハビリテーションとは
英語で表記すると『Rehabilitation』となり、その語源はラテン語の「再び」を意味するReと「適する」を意味するHabilisが組み合わさったものである。
つまり、直訳すると「(人が)再び適する状態になる」ことを示すわけで、治るという意味とはちょっと違う。
病院勤め時代は、骨折や脳血管疾患にて入院してくる方のリハビリを担当する機会が多くあった。
その際、患者様やそのご家族からよく聞かれたのは
『もとの生活に戻れますか?』とか『前のように歩けますか?』といった声が多かった。もちろん、いきなり病気や怪我にてできなくなったことを目の当たりにし、不安いっぱいの中、先のイメージができない。その中でリハビリで自分はどうなるんだ?と言う思いから出る質問であることは十分理解している。
その心の葛藤を『障害受容』といい、①ショック期→②否認期(期待期)→③混乱期→④適応への努力期→⑤適応期という過程を辿るとされている。
リハビリでは、関わる中でその心の葛藤に寄り添いながらリハビリを進めていく。もちろんその受容過程は人それぞれであり、退院する時まで受容できてない方もいれば、早々に気持ちを切り替えている方もいる。
さて、話は戻るが冒頭の利用者様から投げかけられた発言。
これをどう捉えるか?
おそらく、家族などから「お母さん、リハビリして歩けるようにならないとね」と言われたのかもしれない。
または、周りにリハビリを受けて良くなってる方と自身を比べてしまってるのかもしれない。
いずれにしても、リハビリ=良くなる。というイメージが先行したために出た発言であることは間違いなかろう。
繰り返しになるが、リハビリは『適した状態になること』を目指している。
では適した状態とは?
それは身体の回復によって適した状態になることもあるであろう。
しかし、年を重ねた高齢者。
当たり前であるがリハビリをすれば機能回復ができる方ばかりではないし、頑張ったものが必ずしも目に見える結果として返ってこないのも高齢者である。
私は在宅生活における適応するとは、『身体的適応』『精神的適応』『環境的適応』と分けて捉えている。そして改善することで適応を目指すばかりではなく、衰えることに対しても適応していく事を考えることこそ、在宅リハの醍醐味ではなかろうか?
冒頭の利用者さんはきっと良くなることを目指すがあまり、リハビリが義務となりプレッシャーとなってしまったのではなかろうか?
そして私も、『先生のおかげで◯◯できるようになったわ』なんて言われると嬉しいがあまり、利用者さんにもそんな態度をとっていたのではなかろうか?と反省する。
介護保険におけるサービスの主体は本人、利用者様であることはもちろんのこと、リハビリにおける主役も利用者様。
私のためのリハビリではないのだ。
衰えていくであろう身体や生活の変化にも寄り添い、いかに適応していくかを考え、そして楽しみや希望を描ける様なリハを提供したいと思うのである。
さて、私は冒頭のやりとりに対してどう返したかと言うと
『いや〜この暑さで私、リハビリ腕が落ちてるんですよ。笑○○さんはいつも一生懸命ありがとうございます!』
果たしてこの返答は正解なのだろうか?
笑点だったら、『山田くん!一枚持っていってー』となるだろう。だれか正解を教えて欲しい。
2023.08.07