訪問4コマ漫画㊺「推し活とリハビリ」
『推し活』→ アイドルやキャラクターなどの「推し」、いわゆるご贔屓を愛でたり応援したりする、「推しを様々な形で応援する活動」のこと。らしい。
2021年には「推し活」が新語・流行語大賞にノミネートされ、もう耳馴染みになったなぁと思う。
一説によると、日本人は昔から「推し活」好き!?と言われており、推し活文化は古くは江戸時代からあると言われている。
「推し活」による健康効果も研究されており、健康感、自己肯定感が高まったという報告もあるほどだ。
私は利用者様のADL、QOLを改善するために、推し活がどれほど効果があるかが、痛いほど(笑)よくわかっている。
とある利用者様は中高年のアイドル氷○きよ○の大ファン。
ベットの周りにはうちわやら、タオルやらたくさん飾ってあった。
普段は全くリハビリに意欲を示すことなく、身体の不定愁訴(しんどぃ〜とか、痺れる〜とかとか)が多く、
どこの小娘が勧める「歩く練習しましょう」なんて提案はもちろん受け入れず、取り組むことができない。
しかし、しかーーし、どうだろう。
普段ベットで過ごすことが多いにもかかわらず、推しのコンサートとなれば、何時間もかけて会場にいき、数時間のコンサートを楽しんで帰ってくるという、、。
推しのリハビリ効果、リハビリ実施率、ぱねぇったらありゃしない。
他の利用者様だってそうだ。
普段、脳トレなんて、見向きもしない男性利用者。嫌だ嫌だのオンパレード。
そんな時に、iPad使って、昭和の俳優の写真をチラッと見せようもなら、ウィキペディアにも書かれてないような、あんな話、こんな話(事実かどうかはわからないが)出てくるわ出てくるわ。
最後には「来週もこの機械(iPadのこと)使ってみせてよ。」と高度な交渉も交わしてくる。
つまりは、心が動けば、身体はもちろん頭も動くし、生活そのものにも変化を生むことができるのである!
こういう利用者様の様子を直に見ている、体感しているからこそ、
私は心が動くリハビリを!!と常日頃から感じるのである。
とあるご利用者様のお話だ。
乳がんによる骨転移にて大腿骨が病的骨折をした。手術することができず不適格な形で癒合してしまいベット上での生活が中心となってしまった方のお手伝いを数年行ってきた。
何かを改善するとか、よくなるために!という、目的でのリハビリではなく、現状を維持するため、不動による不快感を軽減するための
リハビリが中心、目標であった。
できることは少なく、果たして、自分のやっているリハビリはこれで良いのか?やる意味あるのか?と当時の私は感じていたのも正直な気持ちであった。
何年もお手伝いをする中で、いろんなことも話すようになった。
最近のドラマの話やアイドルの話、芸能人のゴシップ話などなど。
団地の奥様方がゴミ捨てがてらに繰り広げられるような井戸端会議をリハビリの時間にせっせとやっていたのだ。
口は動けども手は動かず、果たしてリハビリに来たのか?話に来たのかわからない日も正直あったと思う。
そんな時間を数年過ごしながら、最後は静かに亡くなられた。
亡くなられたあと、娘様との会話の中で
「母はリハビリの時間とても楽しみにしてました。アイドルとか、芸能人のゴシップ、恋愛話とか、とても楽しみにしていたみたいです。普段私とは全然しない会話なので。
恋愛の話しやちょっと下ネタの話の時とか、母のピンク色の部分がたくさん出てきて(笑)
とても楽しそうにしてて、私も嬉しかったです。」
ピンク色かぁ。
推し活も、きっと人間が本来持っている、ドキドキしたり、ワクワクしたり、キュンキュンしたり、そんな気持ちなんだろうと思う。
推し活の対象は、アイドルや芸能人である必要はない。
○○さんを見に行くために、毎週ディにいくのよ。とか。
○○さんがきてくれると、楽しいからとか。
そーいや、昔、ケアマネさんからのリハビリの依頼書の備考欄に
「イケメン男性スタッフ希望」
と書かれていたっけ(笑)
※マザースにはイケメンもイケジョも、そろってます。
私ごとになるが、我が母も大概のミーハーさんであり、推しがいようものなら、「なんでそんなこと知ってるの?」
というとこまで推しのことなら知っている。
久しぶりに、実家に帰った時のこと、
棚や壁に飾ってあった家族の写真が、当時推していた韓国俳優の写真に全て変わっていた。
えーーっと驚いたのも序の口、母の言い訳ったらありゃしない。
「あんたら(家族)の写真見てもつまらんもん、○○の、写真見てたほうがええやん」
推しの強さを実感しつつ、家族の絆ってなんで脆いんだと思ったのも束の間
母の部屋にもしっかり、どでかいポスターが貼ってあるのを見て
「あぁ〜、この人長生きするわ。」
と子供ながらに思ったのであった。
2025.02.10