訪問4コマ⑤「新人(ペーペー)のころ、、、」
かれこれ10年ほど前、リハビリでお手伝いさせていただいた方の話だ。
当時の私はペーペー。
在宅の世界に足を踏み入れたばかり。何も知らない若造だった。そんな時、当時勤めていたステーションにこんな依頼があった。
『余命あと1ヶ月もつかどうかわからない。在宅でリハビリをお願いします。』
はて、、、ざっくりとした内容の依頼である。
当時の私には十分な人生経験も、療法士としての経験もなく、在宅で看取るということに関してイメージを持っていなかった。
『リハビリ、、、何をすればいいんだ!?』
というのが正直な心の声である。
初めて会ったAさんは、とてもとても痩せていた。部屋に飾ってあるお孫さんと一緒に撮った写真とは、同一人物には思えないほどお痩せになっていた。
しかし自分で歩くことはでき、1人でトイレに行くこともできていた。ただ座る時間が長くなると苦しくなるため、昼夜問わず横になっていることがほとんどの状態であった。
当時の私は、
『リハビリは何かしてあげなければならない』と考えていた。
・困ってることはないかな?
・痛いところはないかな?
・やりたいことはないかな?
・どうしたら楽になるかな?
答えは見つからない。わからない。。リハビリ計画も立案できない。。。
途方に暮れた私は、共にAさんのケアに入っていた看護師さんに相談した。
『私、Aさんにどう関わればいいのかわかんないんです。何をすればいいのか、、、』
ベテラン看護師さんは、ペーペーの私を見捨てることなくアドバイスのような課題を示してくれた。
Aさんと私(看護師)の今の関わりは痛みや苦しさのコントロールが重要で、身体のことの相談はよくしてくれるけど、それ以上をAさんから引き出すことはできない。
『リハビリなら身体のケアや何気ない関わりから、本人が家族にも吐き出せないことを引き出せるんじゃないのかな?』
私は考えた(・´з`・)
Aさんは病気になったことを、家族に迷惑をかけ申し訳ないと言っていた。そして段々と弱っていく身体を、家族が悲しんでいることに申し訳なさを感じていた。
幼稚な頭(おつむ)と浅い経験から導き出した私のリハビリ計画は『申し訳ないという気持ちからの脱却計画』だった。
今思うと本当に幼稚である。ぉ恥ずかしい( ;∀;)
Aさん、申し訳ないって思わないで、誰かのためになってるんだ!って感じて欲しい。
(当時、幸いなこと!?に私には恋人という人物に恵まれずにいた。笑)
いつの時代、世代も恋バナって好きだよな・・・
と思い、リハビリ中に私の身の上相談をAさんに持ちかけたのだ。Aさんにとっては迷惑な話である。赤の他人の若造が『恋人ほしーー』なんてどうでもいい話だ。私だったらそう思う。
しかし、Aさんは私の身の上話を笑い飛ばすことなく真剣に耳を傾け、リハビリ以外の時間も使い私にアドバイスを考えてくれた。『あそこの息子はどーかな?』とお節介までやいてくれた。貴重な時間を私の身の上話に頭を悩ます。勿体無いったらありゃしない、、、
だが、私に人生の【イロハ】を教えてくれるAさんのその顔は、長く座るのが苦しいと言っていた時よりも生き生きしている。ペーペー療法士にもよくわかった。
Aさんは私のために、色々考えてくれたのだ。
そしてある時、Aさんは言う。
『リハビリでね、足踏み10回とかやるでしょ。正直しんどいけど、“10回できた”というのが励みになるんだよ。普段は苦しいからやりたくはないんだけど、身体ケアしてもらっておしゃべりとかするとね、気が楽になってね~足踏みもできるんだよね!』と。
身体は最期に向かって進んでいる。
リハビリは目標を設定し、結果を求められる。
・何もしてあげられなくても、、、
・結果が伴わなくても、、、
・生活が変わらなくても、、、
私はAさんが亡くなる1週間前まで、リハビリとしてお手伝いさせていただいた。
身体はより苦しくなり、足踏みをすることもできなくなってしまっていたけど、リハビリを休むことはなかった。余命1か月と言われてたAさんは、半年近く家で過ごすことができた。申し訳ないという気持ちがなくなったわけではないと思う。
『私とのリハビリの時間は、何か他のことを考えてくれる時間になったかな?』
私は今でも壁にぶち当たる。
療法士としての限界を感じる。
そんな時ふと思い出すのだ!
あの幼稚なリハビリ計画が、あの生き生きとした顔を引き出すことができたことを。。。
— 完 —
produced by hyoudou
2021.04.28








