マザース通信 4月号 Vol.36
2021.04.08
訪問4コマ④「96歳の糸くず工場長」
100歳が珍しくなくなった昨今。私は何歳まで生きるのかなぁぁなんて思ってみたりして。長生きするぞ!と意気揚々に掲げる反面、不安もチラホラ。。。
なぜなら、90歳を超えた時の自分の元気な姿が想像できないからだ。
人に迷惑はかけてないだろうか。。
一人で寂しいのかな。。
歩けるのかしら。。
なんてネガティブな妄想は尽きない。。。
私の出会ったHさん。当時96歳。明治生まれ。
お家の中ですっ転んで大腿骨を骨折。手術を経て晴れて自宅に帰ってきた方だ。その時点で大変素晴らしい。拍手喝采ものだ「パチパチパチ」
娘様と同居しているHさん。娘様もそれなりの年であるが、お母様に負けじ劣らず非常に元気である。親子揃って穏やかだが、口はなかなか悪く、THE 毒舌親子である。
さて皆さん、100歳を目の前にした女性がどのような毎日を送るか想像つくだろうか?
テレビを見たり、縁側でうとうとしたりと時間をゆっくり過ごすのをイメージする方も多かろう。
、、、昨今縁側というのは珍ししいか???
しかし、このHさんは忙しいのである。
ご高齢の方が自宅で生活を送る際、介護ベッドとサイドテーブルをレンタルする事は多い。サイドテーブルの役割は、食事をベッドでとる際に活用したり、身の回りのものを置いたりと多岐にわたる。
がっ! しかしだっ!!!
私はかつて「ミシン」が載っているサイドテーブルを見たのは、後にも先にもこのHさんが初めてだ!
Hさんの毎日は忙しい。
日中はベッドの上でミシンを踏む。ひたすら黙々の作業である。もともと手先が器用なHさん。生きてきた時代もなんでも自分で作って生活をしてきた。そのため作品の完成度もとても素晴らしいものである。
「私、工場長なの♡」
Hさんは自分のことをそう呼んだ。
こっ、工場長!平社員ではなく「オサ」なのである。なんてお茶目な方なんだ。
従業員1人の工場(自室)で今日も工場長は巾着袋や服をひたすら作成している。
工場長は「糸くずババァ」と家族に呼ばれていた。
同居の毒舌娘様がお母さんにつけたニックネームだ。ベッドの上で作業をするためベッドは糸くずだらけ。そのベッドで就寝するため、なぜこんなところに、、、と目を疑いたくなるところに糸くずがくっついているのだ。なかなかの、家族にしか付けられないないネーミングセンスである。
「もう汚いなぁ-」
と毒を吐きながらいつもベッド周りを掃除する娘様。
「この布可愛いでしょ!何か作りなさいよ!」
言葉は強めだがお母様のために買ってきた娘様。
可愛い布。愛情を感じる。
工場長は今日もミシンを踏む。
誰かのためではない。
売るためでもない。
黙々とミシンを踏む。
工場長は今日も糸くずだらけ。
糸くずババァと呼ばれてる。
でもどこか嬉しそう。
顔はいつも笑顔である。
工場長、、、そのお茶目さと、ひたすらミシンを踏む姿。
老いる姿には正解も間違いもなく、優劣もなく、勝ち負けも存在しないと思う。
自然でいいのだ。
不安があってもなくても、楽しくても悲しくてもなんでもいいのだ。
あるがままに生きる工場長。
ちなみに工場長の好物はマクドナルドのエビフィレオらしい!!!
さすが工場長。。。
— 完 —
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2021.03.31
訪問4コマ③「これぞ最高のファッショナブル」
衝撃的な出会いだった。
「おぉぉ!!!」
つい言葉では発しなかったものの、喉の寸前のところまできていたのは言うまでもない。
初対面でここまで強烈な印象与えてくれたのは、Aさんが初めてであった。
Aさんは以前もお話しした鉄道オタクの方である。
Aさんは長年患った糖尿病のため視力が低下しており、また足の指も数本切断していることから日常生活において私たちが思う以上に不自由しているのは言うまでもない。
そのためか否か、初めてお会いした時、Aさんはなんとリハビリパンツ1枚履いて、いやリハビリパンツしか履いていない状態であった。
「えっ、なんで?」
・・・後々理由は納得いくのである。
Aさんは一人暮らし。昼夜逆転の生活を長年続けている。洋服を身に纏うとトイレに行くにしても着替えるにしても非常に手間がかかる。また、きちんと着れていないことも多く、転倒などの危険がある。よって、リハビリパンツ一丁というスタイルが一番機能的で実用的で、正装スタイルなのだ。
そんなAさん。リハビリではご自身で動かすことができない関節運動や筋トレをメインに実施しているが、時には屋外歩行練習を行うこともある。
さぁここで問題です。
「Aさん外に出る時はどんなファッションでしょうか?」
はぃ、もちろん服を着ます。一人ではなかなか着ることができないため、お手伝いをさせてもらい着替えを行う。
なぁんだ、普通じゃん!と思われた方。。。
「ぶっぶぅ〜〜!!!」
Aさんを舐めちゃダメだ。AさんにはAさんのファッション信念がある。あの有名なサッカー選手ヒデ・中田が両腕に時計をつけて話題になったようにAさんにも信念があるのだ。
Aさんのスタイル。。。それは、スキー用のゴーグルをつけて外出することである。「えっ?」と思ったそこのあなた。きちんと目的があるんです。
糖尿病による目の機能低下に加え、普段外に出ることが少ないAさんは昼間の太陽の光が非常に眩しく危険なのである。そこで考えに考えた結果、スキー用のゴーグルを着用するというスタイルに到着したのである。
あの中田にも思いつくまい!笑
セミの鳴き声も聞こえそうな昼間。とてもアンバランスなファッションスタイルのAさん。ゴーグルのレンズには私の顔もバッチリと反射している。
意気揚々とたまの外出にテンションの上がるAさん。向かうはスーパー。目的は、Aさん好物の甘い「懐中もなか」と「どら焼き」。
ゴーグルの下には嬉しそうなAさんの顔が浮かぶも、きっと訪問看護師さんに血糖値が高いと怒られ、どら焼き取り上げられるんんだろうな・・・
と思いながら、たまの屋外歩行練習を楽しむ私であった。。。
— 完 —
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2021.03.04
マザース通信 2月号 Vol.34
2021.02.03
訪問4コマ②「電車と追憶」
鉄道はいつの時代も人の心をがっりちと掴むものであろう。今や「撮り鉄」「鉄子」などオタクもジャンル分けされてるとか・・・
「ガタン、ゴトン、、、ガタン、ゴトン、、、」
静まり返った空間でただ、、、ひたすらというべきだろうか、電車の音しかしない。
ここは駅のホームか?いや違う。ここは市営住宅の一室である。
リハビリの時間に似ても似つかわしくない電車の音。
この方は鉄道オタク。俗に電車の音が大好きな70代男性。「音鉄・録り鉄」とでもいうのであろうか?
若い頃、時間ができれば全国の鉄道をまわって鉄道の発車音や通過音を録音してきたと。その数、押し入れいっぱいのテープ。今は録音機器も、データ管理も非常にコンパクト且つ楽になってきた。50年ほど前?のことを考えると凄まじい努力と情熱がこの押し入れのテープに注がれているのがよくわかる。
Aさんは糖尿病により目を不自由にされ今はほどんど見えない。音だけが楽しみという生活を送っている。
(あと食べることもかな?看護師にしっかり怒られているけど・・・。)
Aさん「先生、今日はいいものを準備したよ!」
ニコニコ顔で私を出迎える。何だなんだ?と興味津々の私。
「この音わかる?」
準備してくれていたのは私の故郷の鉄道の音。
「ガタン、、、ゴトン、、、ガタン、、、ゴトン、、、」
正直わからない。
鉄道に興味のない私にとっって電車の音はどれも同じだ。
「ここ聴いてて!ちょっと巻き戻してみようか?」
70代のAさんは今や10代の少年に戻ったかのうように、私以上に興奮しカセットテープを操る。
不自由な目で、100、いや200はあろう押し入れのカセットテープから私の故郷の電車音を探し当ててくれたその労力と集中力。感謝という言葉では言い表せない。
人は誰かに何かを伝えたくなる欲求を常に持ち合わせている。SNSが普及したのもその為ではなかろうか?
Aさんも私に電車音を教えてくれることによって、きっと欲求が満たされている。なぜなら笑顔が眩しいからだ。
まだまだ続きそうな音鉄鑑賞会。
完全にリハビリを始めるタイミングを逃した私。。。
「チクタク、チクタク、、、」
私は電車音よりも、刻々と刻む時計音の方が気になるのであった。
— 完 —
produced by hyoudou
2021.01.27
マザース通信 1月号 Vol.33
2021.1.1発行
2021 あけましておめでとうございます。
[コンテンツ]
✓ 新年の挨拶
✓ コラム~療法士の世界を~
✓ 連載開始!訪問あるある4コマ漫画
✓ 2021.1 空き枠情報
※PT・OT経験者:積極採用中!詳しくはこちらまで!
2021.01.07
訪問4コマ①「致死量のインスタントコーヒー」
2020.12.28














